社内研修報告(2020.5.7) アテネパラリンピック円盤投げ銀メダリスト 佐藤京子様 精神科に特化した訪問看護ステーションデライト

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社内研修報告(2020.5.7) アテネパラリンピック円盤投げ銀メダリスト 佐藤京子様

訪問看護ステーション デライトでは、毎週木曜日の17:00から全ステーションをオンラインでつないで様々なテーマで社内研修を行っております。
5月7日の研修では、2004年アテネパラリンピック円盤投げ銀メダリストで、現在は特定非営利活動法人東京バリアフリー協議会にて施設調査や介助犬普及を担当している、佐藤京子さんをお招きしました。
介助犬ニコル君との生活や、障害者としての視点から医療職者に伝えたいことなど、ユーモアも含んだお話に社員一同元気を与えていただきました。その講演の内容をご紹介します。

まずは自己紹介をしたいと思います。アテネパラリンピック銀メダリストの佐藤京子と申します。これまで大きな事故に3度遭い、車いすでの生活を余儀なくされました。現在は介助犬のニコルと一緒に生活しています。

実は私は看護師が嫌いです。何度か入院の経験がありますが、医療事故による髄膜炎や詐病疑惑などといった出来事があり、その度にコロコロと対応を変える看護師が信用できなくなりました。誰も私自身を見てくれない、という思いがありました。そんな中、ただ一人だけ私自身と向き合い、毎日リハビリに付き添ってくれた2年目の看護師さんがいました。その看護師さんは詐病疑惑のある私に深く付き合ってくれたために職場での居場所が無くなりその後退職されてしまい申し訳なく思っていますが、私の中では今でも忘れられない大切な存在です。

私がパラリンピック出場を目指したのは、彼女に活躍している姿を見せたい、そしてもう一度会いたいという思いからでした。結局未だ彼女には会えていませんが、いつか会えたら「ありがとう」と伝えたいです。今でも車いす空手を習っているので、大きな大会で活躍して彼女に会えるチャンスを狙っています。

次に、私と一緒に生活している介助犬のニコルについてお話します。そもそも介助犬が何をしてくれるのか分からない方が多いと思うので、説明します。私の場合は、落としたものを拾ってもらうこと、体に装着する装具を持ってきてもらうこと、玄関のドアを閉めてもらうことなどを主にやってもらっています。私が外出するときはニコルに留守番していてもらうということはまずありえないことで、一緒にお出かけもしています。お出かけすると、一緒に歩いていてすごく安心だし、携帯電話などを落とした時に道行く人に「すみません、拾ってください」と話しかける必要もなく、ニコルが拾ってくれるのでとても助かっています。実は小銭も拾えるので、初詣に行った時なんかはたくさん拾ってくれないかななんて考えたりもします(笑)。イケメンで優しくて、誰にでも懐く、彼氏以上の存在ですよ。

しかし、一緒に街を歩いていて時々困ったなと思うことにも遭遇します。最も多いのは、お店に入る時、入り口に“介助犬可”と書いているにも関わらず、店員さんに「うちは犬がダメなんです」と言われることが結構多いんです。そういう時はこちらから介助犬について説明をするのですが、結局入れてもらえないこともあります。まだまだスタッフに対する教育が行き届いていないお店が多いので、介助犬に関する理解を世間に広めていくということが必要だと感じています。私自身、東京バリアフリー協議会での介助犬普及担当として、小学校での出前授業や街中のバリアフリーの点検を行ったりしています。有名どころだと、東京スカイツリーやららぽーとなどを覆面調査員というような形で点検しました。お店を回ったり店長さん達が集まる会議の中でお話をさせていただいたりしています。私自身“障害者”となって30年ほど経ちますが、ここ10年はだいぶ暮らしやすい世の中になってきていると感じます。以前は電車に乗ろうとすると1時間待たされることもあったのですが、最近はそういったことはなく、急いでいる時には駅員さんが同乗して目的地まで付いて行ってくれることもありました。エレベーターの設置率も上がってきていて“障害があるから出かけられない”ではなく“障害があっても出かけられる”環境が整ってきていると思います。

問題点としては、私のような車いすユーザーにとっては床面がフラットな施設がありがたいのですが、視覚障害者の方たちが必要としている点字ブロックが進行の妨げになってしまう現状があります。また、最近の多目的トイレの用途が増えすぎていて、赤ちゃんをあやす目的でお母さんが使用したり、健常者が着替え目的で使用することが多く、私たちになかなか順番が回ってこないのです。さらに、トイレ内の設備が増えすぎて車いすの方向転換ができず結局使えないということもありました。今後の課題としては、健常者と様々な障害を持つ方たちがより快適に共生できるような環境が求められると思います。

最後に地域医療に携わる医療従事者に伝えたいことをお話します。私は大きな事故を3度経験し、詐病なのではないかと疑われたこともあり、とても辛い思いをしました。訪問看護師さん達も、医師からの指示書や関係者からの情報をもとに各利用者さんの訪問に行かれると思うのですが、その先入観ではなく、目の前の“私自身”を見て下さい。それが一番の願いです。私の嫌いな看護師さんにならないでください。