デライトブログ 第16回「クライシスプランの導入について」その2 精神科に特化した訪問看護ステーションデライト

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デライトブログ 第16回「クライシスプランの導入について」その2

 

 

訪問看護ステーション デライト新宿  管理者 須佐 政晴
訪問看護ステーション デライト葛飾  看護師 杉 遥

 

今回は、前回に引き続きクライシスプランの導入について、デライト新宿の須佐看護師とデライト葛飾の杉看護師にお話をお訊きしました。

 

ーー今の所、これが導入されたことによって、変化は現場にもありましたか?

杉  これからですね。

ーーこれからですか。

杉  実際みんな聞き取りが難しそうとか、一歩踏み出せないという方も多いので、まずはそこからという感じです。

ーーそうですよね。利用者さんからすると、これをアウトプットする作業ってなかなか大変ですよね。自分と向き合うという作業にもなりますもんね。自分が駄目なところを可視化するというのは、なかなか辛いですよね。最初がけっこう大変ですね。

須佐  とりあえず私自身でも作ってみました。スタッフもみんな作ってもらって、辛い時はどれくらい辛いのか、その場合の対処方法を自分で持っているのかを自覚してもらいます。

杉  みんなそういうの、無意識でやっているので。

須佐  自分も最初の時は全然出来なくて。どれだけ自分で自分を分かっていなかったんだという。

杉  出てこないですよね。みんな止まります。

須佐  白紙になって、一行書いても二行目がでてこないとか。何か挟んでやったりとか、他のスタッフに色々聞いて自分もそうだなとか、そういう感じで少しずつ話を膨ませていきます。
そういうのを利用者に見せたりすると、自分もやっているし、やると凄い良いよって言うと導入しやすいです。利用者さんだけにやろうよと言っても、私だけ辛い思いしてみたいになるので、実際自分も作ってみたら面白いことが分かってさみたいな感じで話すと、取っ掛かりとしてはとっても良いです。

ーー自分を振り返るのって、普通に暮らしていても難しいですよね。

須佐  難しいです。

杉  スタッフにとっても、自分自身のメンタルヘルスの意識付けになると思います。

須佐  これを今我々二人が先行してリーダーとしてやっていて、これからデライト全体に広げていくという段階です。

杉  全ステーションの中で、先がけて葛飾のステーションがやっている感じです。

須佐 それで最近、委員会を立ち上げました。

杉  各ステーションから1名ずつ委員を出してもらって、私たちの経験を伝えながら各ステーションでこれから展開していく予定です。

ーーまだ検証期間中という感じなんですか?

須佐  導入時期という感じです。

ーーこれは行政や医師や病院関係機関もやられているんですか?

須佐  私は以前医療観察法の病棟で働いていました。医療観察法とは精神障害で犯罪を犯した人に、1年半ぐらい病院に入院してもらいたくさんのお金をかけて治療していくという事をやっているところです。出る時にはクライシスプランを必ず作らないといけないんです。そこからクライシスプランは始まっています。
今はもう、大きな病院などで積極的に研修をやっているところは、当然始めていて少しずつ広まりつつあるんですけど、まだ始まって10年そこそこです。一般精神医療の病院で5年目ぐらいです。訪問看護も大手の会社など研修に力を入れているところは始めているけど、まだまだ広まりも少ないようです。
僕は当社内だけではなく、クライシスプランを全国で広げていきましょうという会にも以前から参加しています。

ーーもともとそういった知識がある中での、今回の導入なんですね。

須佐  前々から社内でも導入したほうがいいという話をさせて頂いていて。それで今回委員会も立ち上げて、社内全体で展開していくという流れになりました。

ーー訪問看護会社の中では割と先駆けですね。

杉  はい。まだやってないところの方が多いと思います。

須佐  ただうちは訪問看護でも精神科に特化っていうところを打ち出しているので、当然全ステーションでこれが出来るようになった方がよいと思います。

杉  実際、病院さんから退院時に一緒に資料が送られて来ることもあって。そこで終わってしまうともったいないので、うちでも引き継ぐ事が出来て、また再度入院する時にうちから表を一式送付して共有させて頂くということが出来るようになります。

ーー順調に行けば、まず社内で広まって皆さんが共有できる状態になって、その先で全国に広まっていくという感じですね。ただ一番大変なのは最初に表を作り出すところなんですね。

須佐 そこがどうしても最初の一歩を踏み出せるか踏み出せないかのところです。要はこれまでの訪問看護をやっていて、そこまで聞かれなくても何となくやれていたスタッフからすると、新しい取り組みをやらなきゃいけないということで、分からない事も多いし、今までやっていて何で問題ないのに、仕事が増えるって思う方もいらっしゃると思うんですけど。
でもこれだけメリットも多いし、デメリットも先程言ったとおり最初の一歩の取り掛かりだけなので、そこをいかに協力してもらうかというのが、今の大きな課題ですね。

ーー利用者さんにとってこの作業自体が負担になって、症状が悪化するっていうのが一番良くないケースですもんね。

杉  スタッフの技量もあると思います。利用者さんに楽しんでやってもらう事とか。

須佐  あまりガチガチにやると良くないです。利用者さんにそれが伝わると何が問題かというと管理されてる、やらされている、病院と一緒だ、またはせっかく退院して自由になったのにと受け取られてしまうので。

ーーそういう風に受け取る事もあるんですね。

須佐  これは管理ではなく、本人がいかに社会の中で自由に、困らないで生きていけるかを手助けするためのものなんだという事をきちんと伝えないといけないんです。
僕たちはあくまで手助けするための道具を作るというスタンスでないと、ここはどうなっているんですか、あれはどうなっているんですかとか質問攻めにしたり、職員が勝手に内容を固めたり、また結局管理されているとなってしまうと、症状が悪化したり、訪問看護が嫌だとなってしまうのでそこだけは気をつけなきゃいけません。

ーー受け取る側の感覚差も大きいですよね。

須佐  主体性をこちらが持っているか利用者さんが持っているかですが、そこはもちろん利用者さんに主導権があります。スタッフが、利用者さん的にそんな事は書かれたら困るっていうことは書かないようにしなきゃいけないし、本人が気づくまでは書いちゃいけないというのは配慮が必要です。

杉  本人に気づいて頂くっていうことが、難しいところでもあり大事なところでもあります。

ーー本人がまず気づかなくちゃいけないって大変ですね。また例えば今後、最初に誤った表を作ってしまったら、そのまま進んでいってしまう。そういう危うさもありますよね。

須佐  そうですね。スタッフの事前研修は大事です。
また表がなかなか出来ない場合、最初はほとんど白紙に近い1行2行でもいいですし、そこで一気に導入出来ないにしても、少しずつ利用者さんが気づいたことを足していくと、ちょっとずつ増えてきたねみたいな感じにしていくというのもありだと思います。最初から100%求めてしまうと、本人も辛くなるので20%でも良いと思うんです。
それでとりあえずやってみて、こういうのもあるよね、ああいうのもあるよね、ってスタッフが色々関与していきながら、気づいたことをまた書き出していくっていうことをやっていくと形になるというか。

ーー症状が緩和されると当然、ステップも、項目も変わってきたり、更新もやっぱり必要になりますよね。

須佐  それは絶対必要です。

ーーまとめになるんですけども、クライシスプランの今後の活用方法とかの将来的なお話をお伺いしたいのですが。

杉  一つは先程言ったように、通常の報告書とともに表を医療機関の方に送付をさせて頂く事。それから今後はこれを訪問看護の訪問内容の軸にしていく事ですね。

須佐  また表作成の段階で、どんなクライシスプランを作るかをイメージがある程度見えているスタッフが増えて欲しいです。そうすると精神症状をある程度想像出来るので。
こういう風なものを作りたいなという、それをゴールに利用者さんと関わっていけるような。それが出来ると看護としても凄く展開できるし、精神科への理解も進んでいくのでそういうスタッフをなるべく多く作りたいです。

杉  なかなか精神科って症状がひとりひとり違って答えがないし、どうしても対応がスタッフのスキルや経験というところに大きく左右される部分があるんです。
それを表にすることによって、そこのレベル感を全体的に少しでも上げていけると良いかな。これはその助けになるツールじゃないかなと。
今若手の看護師さん、経験の浅い方でも精神の訪問看護にチャレンジしてみたいっていう人も沢山いるんです。実際、うちはスタッフもどんどん増えていますし。
その中で、あなたは経験が20年あるから対応策がすぐ分かるかもしれないけど、私はそんなの分からない。だけどこういう表があれば、先輩にも話を聞いたりして知識を取り入れるきっかけに出来るかなと。

須佐  人によってサービスの質が変わらないように。

ーープラスアルファのツールっていうことですよね。デライトは担当制にしない、いろんな利用者さんのところに色んな看護師が訪問看護に行くスタイルだし、もちろんエリアも広いですしね。だからこれに頼りすぎては良くないけど、無いよりはあったほうがもちろん絶対良いですもんね。

杉  これから全国的にも広がっていくと思うので、これが当たり前になっていくと思います。

ーー利用者さんとしてはこれを使って自分で症状をコントロールするという目標を達成して、最終的にこれがなくても大丈夫になれたら、それは凄く理想的ですね。

須佐  そこまでなれたら本当に素晴らしいですね。

ーーそのためにこれが色んな所で早く広まってゆくと良いですね。今日はありがとうございました。

全員 ありがとうございました。

 

 

【デライト葛飾 杉看護師】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【デライト新宿 須佐所長】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【編集後記】 ブログ第16回は須佐所長、杉看護師への座談会形式での掲載2回目です。
新たな取り組みにより、ご利用者の症状改善や安定に少しでもつながると嬉しいです。