デライトブログ
デライトブログ 第2回 「訪問看護のあれこれ その2」
ブログ第2回「訪問看護のあれこれ その2」
(ブログ第1回「訪問看護のあれこれ その1」はこちら)
訪問看護ステーション デライト葛飾
所長 長土居美紀
デライトグループは精神科に特化した訪問看護ステーションのため、精神疾患をお持ちの利用者さんの事例が主になっております。
【看護と介護の違い】
○「看護」と「介護」の違いについて、こう語ります。
ご利用者さんの日常生活をベースに考えると、できないことをしてあげるのが「介護」で、その方の持っている能力を活かしながらできるようにサポートするのが「看護」なんだと思っています。そのため、必要以上の手助けはしないようにしています。
不安だったり勇気がなかったり、能力はあるのだけれど面倒だと思ってしまったり、自信がないと思っていることに対して、「ちょっとやってみようかな」と思えるように働きかけています。その場その時を見るのではなく、その先のことも視野に入れています。例えば、ご高齢のお母さんと二人暮らしの息子さんがいたとして、その方が将来困らないよう、家事ができるようにとか、手続きができるようにサポートします。その方ができそうな簡単なことから始め、徐々に一人でできるようになると、その小さな成功体験がご利用者さんの自信になってステップアップにつながると思っています。言葉でいうのは簡単ですが、できるかできないかの見極め、時間、労力も必要なので、難しさはあります。援助者は基本的にやってあげたいタイプなので、できないことをしてあげる方が簡単なんですけどね。
【医療とのつながりが大切】
○訪問看護が必要になるのは、どんなケースなのでしょうか?
入院していると、すぐ近くに先生や看護師さんがいて、常に守られています。何か心配なことがあればすぐに相談できます。しかし、家に帰ると、自分から受診しに行かない限り、医療につながらなくなってしまいます。そこで、看護師が定期的に訪問して、主治医と連携しながら病状の観察やお薬の相談などを受けたりすることで、家に帰っても医療とのつながりを継続できます。何より、身近で何でも相談できる存在がいることは、ご利用者さんにとっても安心ではないでしょうか。
この「医療とのつながりを維持する」というのが、訪問看護の一番大きな意義だと思います。ご利用者さんにも最初にそのことを強調して伝えています。ただ、在宅看護では、医療だけが看護師の役割ではなく、できる限り健康で在宅生活が維持できるような支援が必要です。そのため、必要に応じて地域の社会資源につながるように、保健師やケアマネ、相談支援やグループホーム、就労事業所等とも密に連携しながら、一人のご利用者さんを支えています。支援者は多い方がご利用者さんにとってメリットが大きいと思っていますし、役割分担しながら支えることが、支援者それぞれのパフォーマンスも最大限に発揮でき、支援の質も向上すると思っています。
【一番怖いのは「孤独」】
○孤独というのは、人を傷つけるとても危険なもの
三大死因ってありますよね、がんとか脳卒中とか。それに匹敵するくらい、孤独って良くないことだと思っています。人を不健康にしてしまうと。孤独だな、人と喋ってないな、相談する人がいないな、そんなことを感じたら、ぜひ声をかけていただきたいと思っています。
これは私じゃなくてスタッフが経験した話なのですが、仕事中にファミレスで休憩をしていたら、横の席で高校生の女の子二人が、泣きながら話をしていたそうなのです。どうやら、お母さんが精神疾患で生活が破綻してしまって、娘が悩んで友達に打ち明けたのですが、その友達もどう答えていいのかわからない様子でした。
いてもたってもいられなくなって、「デライト葛飾」の名刺を渡したそうです。「なんかあったら相談してね」と。
世の中には「医療に繋がっていない精神疾患をお持ちの方」がもっといるんじゃないかと思うのです。自分や家族の抱えている問題が、精神疾患かどうかもわからないまま、ただ生きづらさを感じながら困っている方たち。そういう方たちが、何かアクションしてくれたらいいのにって、日々思っています。
そういう方たちが適切な医療につながり、安心して地域で暮らしていけるように、私たちができることは何だろうと考えます。そういう方たちに訪問看護っていうものをもっと知ってもらいたいと思います。
【医師との連携】
○訪問看護は医師からの指示書に従って行われます。また月に一度ほど医師へ報告書を送り、医師と密接に連携しながら看護をしています。
訪問していて思うのは、ご利用者さんは、先生の前では緊張して言いたいことが言えなかったり、自分の病状をどう伝えていいかわからない方が多いです。「薬飲んでいますか?」と聞かれても「はい飲んでいます。」や「調子はどうですか?」と聞かれても「変わりありません」って答えてしまって、では、いつもの薬出しておきますね、という受診流れに。
そこで私たちは、受診前に先生への相談ごとや伝えたいことを聞き、一緒にメモに書いたり、こんな風に伝えるといいんじゃないか等のアドバイスをします。時には、看護師からの手紙を渡してもらうことも。電話やFAXで情報を共有させてもらうこともあります。 月1回、主治医にご利用者さんの様子を記載した報告書を提出していますが、それ以外にもご利用者さんの了承を得て、電話やFAXで情報共有させていただくこともあります。
【利用料金】
○利用料金は、いったいどうなっているのでしょうか?
訪問看護は、介護、医療どちらでも可能です。精神科に通院されている方は自立支援医療制度の対象になるので、自立支援医療受給者証をお持ちの方は一割負担となります。金額でいうと上限が2,500円~20,000円、所得に応じ異なります。
またその自己負担分を健康保険で負担する制度もあり、それが適用されると実質自己負担なしで訪問看護を利用できる場合もあります。
注.上記はあくまで事例であり、内容により負担金は異なります。
【ご利用者さんのよき伴走者として】
○訪問看護の果たすべき役割について聞きました。
退院できたとしても、すぐに健康な方と同じようになんでも自分でできるかと言うと、なかなかそうはいかないですよね。入院生活から、完全に健康な生活に戻るためには、その間に「助走期間」が必要なのです。そこに寄り添って伴走者となるのが、訪問看護の役割だと思っています。そして最終的には、それが要らなくなることを目指します。
精神疾患はどうしても長く付き合うことになりますから、その方の病気に対する思い、価値観や人生観、なぜそう思うのか、なしっかり話を聴くことがとても大事だと思っています。
訪問看護を開始する時は、まずは信頼関係を作るところから始めます。
「この人は安全な人、味方なのだな」とご利用者さんに思ってもらうことが始めの一歩です。そうでないと、誰しも人に自分のことを話す気にはならないと思います。ご利用者さんの中には、対人不信、対人恐怖、コミュニケーションが得意じゃない方も少なくはないですから。
【デライト葛飾の事務室】
【編集後記】
ブログ第2回は引き続き長土居所長へのインタビュー形式にて行いました。私が思っていた以上に長土居所長の看護哲学(!?)に触れることができて好感触でした。