精神科訪問看護とは
地域の中で生活する精神疾患や精神障害を抱える方が、安心して日常生活を送ることができるように看護師等が自宅に訪問し支援を行います。
病院とは異なり、生活の場に入って看護を行う訪問看護では「患者」ではなく「利用者」と表現します。
精神科訪問看護では、コミュニケーションを通して精神状態の観察と、日常生活や服薬状況の観察を行い、良い状態を維持または良い状態に回復できるよう一緒に考えていきます。
ご利用者のより良い生活を維持していくために、主治医や関係機関(役所、保健師、デイケア、作業所、計画相談など)と連携してチームで支えていきます。
ご利用者が100名いれば、同じ疾患名でも性別や年齢はもちろん、病状や服薬しているお薬、病気の経過や生育歴などすべてが異なります。つまり、精神科訪問看護では疾患名で一括りにせず、個別のニーズに焦点を当てた看護が実践されます。
- 対象となる疾患
- 統合失調症、双極性障害、うつ病、アルコール依存、薬物依存、解離性障害、強迫性障害、睡眠障害、摂食障害、適応障害、認知症、パーソナリティー障害、発達障害、パニック障害、不安障害、高次脳機能障害、てんかん 等幅広い疾患を対象としています。
- 訪問看護利用のメリット
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- 精神状態の安定(精神症状の波が穏やかになる)
- なんでも話せる味方ができる(タイムリーに助言を受けることができる)
- ご本人や家族の病気への理解を促進できる
- 必要に応じて主治医との橋渡しを行い、より効果的に治療を受けることができる
- 早期に病状の変化に気づき、病状の悪化や入院を予防できる
- その結果、自分らしく生活をすることができる
- クライシスプランの作成
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クライシス・プランとは、安定している時の状態、調子が優れない時の状態、それぞれのサインと対処をご利用者と支援者で一緒に考え整理し、紙に書き出したものです。早めに不調に気付き、早めに対処することで安定した状態を維持することに役立ちます。特に望まない入院を防ぐ上でとても有効的であると言われています。
しかし、病状の安定だけがご利用者の人生の目標ではありません。
デライトでは、クライシス・プランがご利用者自身の希望や目標をサポートしていくためのツールになるよう、一緒に考えながら作成し、医師や他の支援機関とも共有し活用しています。
ご利用事例
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Aさん 28歳・男性
疾患:統合失調症
- 【訪問看護 導入前】
- 規則的に服薬しているつもりではあるが、薬を飲むことを忘れてしまうことが多々あり入退院を繰り返していた。服薬さえ規則的にできれば精神状態が安定するという自負もあったため支援を受けず一人で生活することを希望し、何度も主治医から訪問看護の導入を勧められていたが断ってきた。しかし、今回の退院時には主治医からの強い勧めにより訪問看護導入に至る。
- 【訪問看護 導入後】
- 退院後から3か月間は週5回訪問。服薬が規則的にできるようになるためにはどうしたらいいかを看護師が一緒に考えてくれた。薬のセットを看護師に手伝ってもらいながら、自分に合った薬の管理方法を見つけることができ、週3回の訪問でも規則的に服薬できるようになった。それからは調子を崩すことなく精神的に安定した日常生活を送れている。看護師が来て趣味の話など他愛ない話をしてくれることで、日々の生活にハリが出たことも大きい。
- 【訪問看護を検討している方へのメッセージ】
- 退院すること自体や訪問看護への不安がありましたが、退院までの間にデライトの看護師含め入院中の担当看護師や医師も交えて退院前カンファレンスを行い、徐々に不安を解消することができました。看護師の人柄と訪問看護ってどんなものかを丁寧に説明を受けることができ、退院後の生活を前向きに捉えることができました。まずは一歩踏み出し、精神科訪問看護師さんとの面談をしてみてはいかがでしょうか。
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Bさん 39歳・男性
疾患:ADHD/双極性障害
- 【訪問看護 導入前】
- 元々通院をしながら仕事をしていたが、時々調子を崩してしまうことがあり今回長期の入院をしてしまう。頻回な入院により退職となってしまい、次の就職では調子を崩すことなく仕事を継続できるようにと、友人の勧めもあり就労移行支援サービスの利用を開始。担当者から「今のうちから訪問看護を受けてみないか」と勧められ訪問看護導入に至る。
- 【訪問看護 導入後】
- 訪問看護で看護師と話をする中で、自身の考え方の癖に気付き、無意識に頑張りすぎてしまっていたと自己理解を深める。そこからは自分の生活や行動を見直し、大きなストレスがなく精神的に安定した日々を送れている。寄り添って一緒に考えてくれることやタイムリーに相談できることはもちろん、客観的な視点で助言してくれることが心の大きな支えになっていた。就活時から就職し3年が経過する現在も、訪問の頻度は変わったが週1回の訪問看護を継続しながら自分らしく無理せず仕事を続けられている。
- 【訪問看護を検討している方へのメッセージ】
- 当初は働ける自分に訪問看護は必要ないと感じていましたが、自分にとって大きな良い変化がありました。少しでも自身の病気や生活に不安があるのであれば、ぜひ積極的に相談をしてみるといいと思います。
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Cさん 13歳・女性
疾患:ASD/軽度知的障害
- 【訪問看護 導入前】
- 母子依存。リストカットを日常的に繰り返し、その対応に母が疲弊。母の強い希望もあり入院となる。半年間の入院を経て退院。入院中は比較的穏やかに過ごすことができる。退院後の生活について母子ともに不安が強く、入院中に精神科訪問看護師と面談を繰り返し退院日当日に初回の訪問を実施することとなる。
- 【訪問看護 導入後】
- 退院当日に看護師が訪問する。本人の部屋には真新しい血飛沫が広がっていた。帰宅して早々、娘のリストカットを目の当たりにし母は大混乱。悲鳴をあげ血の処理に追われていた。看護師2名で訪問し、本人と母親と分けて話をする。訪問看護の時間は娘と唯一離れる時間となり、母親も日に日に冷静になることができる。母親自身が娘の行動や言動に左右されにくくなり、結果的に娘の精神状態の安定にもつながる。タイムリーに振り返りが行えることで、娘自身にも変化があり2週間後にはピタッと自傷行為を止めることができる。
- 【訪問看護を検討している方へのメッセージ】
- (ご利用者の母)本人への対応方法を専門家である看護師に一緒に考えてもらうことができ、娘に適切な声掛けができるようになりました。一人で抱えず、私自身も安心できたことも大きいです。これまでは本人も病気を理由に将来を悲観していましたが、信頼できる大人の関わりが増えたことで自分の夢を見つけ今は前向きに頑張ることができています。
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Dさん 83歳・女性
疾患:認知症
- 【訪問看護 導入前】
- 単身生活。物忘れから服薬も不規則で、短期記憶の障害が顕著にみられていた。例えば、食べ物を電子レンジに入れたまま忘れてしまい腐らせてしまう。火をかけたまま忘れてしまい小さなボヤ騒ぎも。そんな中、自治会とのトラブルが発生したことをきっかけに地域包括支援センターに相談が入り、介護保険の調整とともに訪問看護導入に至る。
- 【訪問看護 導入後】
- 声掛けや服薬セットの工夫から薬の飲み忘れは週1回~2回程度にまで激減。それと同時に服薬の効果が表れ、短期記憶の改善もみられる。看護師の介入と同時にOT(作業療法士)介入で体操や脳トレなどのリハビリを行い、認知機能が維持できることでQOL(Quality of life=生活の質)が向上。また日々話せる人ができたことで孤独感の解消につながり、抑うつ気味で引きこもりがちであった生活にもメリハリができる。
- 【訪問看護を検討している方へのメッセージ】
- (地域包括支援センター担当者様)単身での生活は難しい方かと思っていましたが、精神科訪問看護師さんたちの支援でここまで単身生活が維持できるようになるとは思いもしませんでした。単身生活をあきらめる前に、誰しも一度は検討してみてほしいと思います。