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デライトブログ 第5回 「精神科特化の訪問看護ステーションにおける作業療法士の役割 その1」
ブログ第5回「精神科特化の訪問看護ステーションにおける作業療法士の役割 その1」
訪問看護ステーション デライト蒲田
作業療法士 川島一洋
訪問看護ステーションデライトには、看護師だけでなく、作業療法士も医療スタッフとして在籍しています。作業療法士とは、一言で言えば「リハビリテーションの専門職」です。
「作業」と言うと手工芸のような細かい手作業を思い浮かべる方も多いと思いますが、ここでは食事や着替えなどの日常生活の動作や、家事や仕事、余暇を過ごすための趣味なども「作業」と位置づけています。
怪我や病気などで、生活の中の様々な「作業」がうまくできなくなった人をサポートして生活をより良い方向に導くのが、作業療法士の仕事です。
今回は、デライト蒲田の医療スタッフで作業療法士の、川島一洋さんにお話を伺いました。
──訪問看護の仕事における、作業療法士の役割とは、どんなものでしょうか?
まず、作業療法士の基本的な役割というのは、肉体的・精神的な疾患が理由で、生活全般の動作がうまくできなくなった方へのサポートやアドバイスです。例えば脳梗塞や脊髄損傷などによる身体障害のリハビリなどは、作業療法士の仕事として代表的な物だと言えるでしょう。
それに対して、デライト蒲田では主に精神疾患をお持ちの方を対象として訪問看護サービスを行っています。
例えば、統合失調症やうつ病で精神科に入院されていて、退院できることになったけれどまだ不安が残るとか、退院してもまず何をしていいのかわからない方、また、症状が不安定だったり生活リズムが乱れやすい方などが主な対象となります。
特に精神疾患の場合は、能力的にはできるはずなのだけれど、症状のせいで意欲が低下してしまったり、手順を考えて実行していくことができなかったりしてうまくこなせないというケースも多く見られます。そういった方に対しては、生活の中の作業を通じて、少しずつできるようになっていけるようにお手伝いさせていただきます。
あとは、精神疾患の症状のせいで、昔できていたことができなくなっている例も多いです。家事や仕事もそうですし、統合失調症による幻聴や妄想が原因で、なかなか外出ができなくなっている方もいらっしゃいます。そういう方に対しては、こういう考え方をすると少しは気が楽になりますよ、といった感じのアドバイスをさせていただいています。
──外出が難しくなるケースは多いんですか?
ええ。統合失調症による幻聴や妄想の症状が現れている方もいらっしゃいます。
あるいはそこまで明確でなくても、外出すると自分に対して何かマイナスなことを言われるような漠然とした恐怖を感じている方もいらっしゃいます。
それから、生活リズムが昼夜逆転になってしまっている方も多いです。そういう場合は、まずは夜からでもいいのでコンビニに行ってみたりとか、できることからちょっとずつ実行していきます。
それと並行して、昼夜逆転を戻すために時間を決めて寝ましょうとか、シャワーを浴びたあとはテレビを消して、ちゃんと床に入りましょうとか、そういう取り組みをしていきます。
どんな場合でも、ご本人様が頑張っていらっしゃる事が必ずあるはずなので、それを見つけて、できてますねと言って差し上げます。
本人にはわからなくても他の人から見ればちゃんとできている事というのも結構ありますので、そこは認めつつ、さらにできることを増やしていく、そういった方針ですね。
──そうやって、できないことを少しずつできるようになっていくわけですね。
基本的にはそうです。ただし「できないことができるようになる」ということが、必ずしも最終目標だとは限りません。
どちらかというとむしろ、作業のリハビリを通じて利用者さんに目的意識や自信を持っていただいて、暮らしやすくなったり生活の幅が広がったりということを目指しています。作業はそのための手段だという考え方です。
女性の方だと手芸をやってもらったり、あるいは折り紙を持っていって、こういうのを折ってみませんかと勧めることもあります。
手先を使うことは脳の活性化につながりますし、やっている間は他のことを考えなくていいのでメンタル的に落ち着く効果もあります。集中することが、不安に苛まれている日々の気分転換になります。
そしてできた物を家族の方に見せると「ああ、こういうのも作れるんだ、すごいね」と言われてコミュニケーションになりますし、達成感や承認欲求も満たされます。能力を認められたことで自信がつき、それが症状全体の緩和に繋がります。
──デライト蒲田の利用者さんの男女比や年齢は、どのくらいなんでしょうか?
全体としてはほぼ男女半々に近く、男性の方がやや多いくらいです。私がメインで担当している利用者さんはほとんどが男性です。
年齢については、いちばん若いのは中学生の方です。上は70代中盤の方がいらっしゃいます。
──中学生の方もいらっしゃるんですか。どんなアドバイスをしているんですか?
家からなかなか出られず、生活が昼夜逆転状態になってしまっている方です。家にこもって好きなゲームをやっていることが多いですね。
なので、僕も昔ゲームが好きだったので、雑談としてゲームの話をしながら親睦を深めています。
そして、ゲーム好きということを利用してなんとか活動性をあげられないかと考えています。
睡眠リズムに関しては、毎日何時から何時まで寝たとチェックする「リズム表」を作って記録してもらっています。
【デライト蒲田 川島作業療法士】
【編集後記】
ブログ第5回はデライト蒲田の川島さんへのインタビュー形式にて行いました。川島さんは作業療法士としてデライトに初めてご入社いただき、看護師とは異なった視点、アプローチで日々利用者様に接していただいています。第6回では、精神科訪問看護の現場における作業療法士についてさらに詳しくお話を伺います。